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スティグリッツ|PROGRESSIVE CAPITALISM|本の要約・まとめ・感想

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スティグリッツ PROGRESSIVE CAPITALISM(プログレッシブ キャピタリズム): 利益はみんなのために

(このページは2020年2月26日に更新されました)

はじめに

「トレンド本や名著をかいつまんで、要約・まとめを知りたい。」

「本を買う前に、実際に読んだ人の感想を知りたい。」

この記事はそんな方へ向けて書いています。

記事の作成者は、『SNS時代のリアルな居場所』として価値観を共有できるライフシフト読書会を毎週開催しております。

関西の読書会で本の感想をアウトプットしたい方はこちら

スティグリッツ PROGRESSIVE CAPITALISM 目次

  • まえがき レーガノミクスやトランポノミクスによる民主主義への攻撃
  • 第1部 迷走する資本主義
     第1章 分断された世界
     第2章 悪化が進む経済
     第3章 搾取と市場支配力
     第4章 グローバル化により自らの首を絞める国家
     第5章 金融が引き起こした危機
     第6章 新たなテクノロジーが提示する課題
     第7章 なぜ政府の介入が必要なのか?
  • 第2部 政治と経済を再建するために
     第8章 民主主義を回復する
     第9章 万人に仕事やチャンスを提供する力強い経済を回復する
     第10章 万人にまともな生活を
     第11章 市民社会を再生する

スティグリッツ PROGRESSIVE CAPITALISM まとめ

“1%の、1%による、1%のための経済”から、誰もが豊かさを共有できる経済へ。

ノーベル経済学賞受賞者が、市場原理主義に異を唱え、現状を改善するための処方箋を示す。

従来、米国では経済は自由市場に任せておくのが一番いいとされてきた。

だが現実には、ごくわずかの企業が権力を握りほとんど競争が行われず、市場がうまく機能していない。

大多数の国民が、低収入でぎりぎりの生活をしている。

このような場合、政府が対策に乗り出せば、事態を改善できる。

グローバル化が、米国経済に弊害をもたらしている。

たとえば、米国が多くの人手を必要とする製品を輸入すれば、米国の労働者の需要が減り賃金は減少する。

また、グローバル化により企業は、「法人税を下げないと外国に拠点を移す」と政府を脅すことが可能になった。

実際、米国では2017年に法人税率が35%から21%に削減された。

市場の力だけに任せていては、公平な成果は生まれない。

それは、個人や企業は私的な利益のみを考え、社会的な利益まで考えないからだ。

政府と民間との「共同行動」が公益につながる。

相互依存社会に「規制」は欠かせない。

米国の銀行は規制撤廃運動を推進したが、法や規制なしにうまく機能する国や経済などない。

どんな場合であれ考えるべきは「どんな規制を行うか」であり、「規制の撤廃」ではない。

米国の病を治すには、根本的な問題である、米国人の「価値観」に目を向ける必要がある。

人々は金銭を求めるが、過剰な貪欲をほめはしない。

むしろ、他人に身を捧げる人を称賛する。

こうした称賛すべき傾向を政策に組み込む努力を怠ると、強欲や他人の幸福への無関心が広がり、米国は暗黒へ向かう。

スティグリッツ PROGRESSIVE CAPITALISM 要約

迷走する資本主義

現在、米国などの先進国をはじめ、世界中に不満が蔓延している。

過去四半世紀に米国を支配していた経済学や政治科学の考え方によれば、こんなふうにはならないはずだった。

1989年にベルリンの壁が崩壊すると、民主主義と資本主義が勝利を収め、これからは経済がかつてないほどの速さで成長を遂げ、豊かさが全世界に広がるだろうと考えられた。

分断された世界

だが、2008年の金融危機で、資本主義が完全ではないことが明らかになった。

資本主義は効率的でもなければ、安定しているわけでもなかった。

失敗しているのは経済だけではない。政治もそうだ。

富や権力を持つ人たちが、その政治力を駆使して、自分たちに有利になるように政治や経済のルールを書き換えている。

米国では、ごく少数のエリートが経済を支配している。ジェフ・ベゾス、ビル・ゲイツ、ウォーレン・バフェットの3人の資産の合計は、米国の所得階層の下位半分の資産の合計よりも多い。

市場はうまく機能していない

過去40年にわたり、米国を支配してきた理論がある。

経済は自由市場に任せておくのが一番いい、という理論だ。

だが現実には、ごくわずかの企業が多大な権力を握り、ほとんど競争が行われていない。

市場がうまく機能していないのは明らかだ。

市場を適切に機能させるには、無数の条件を満たさねばならない。

活発な競争が行われていること、情報が完全であること、個人や企業の行動が他に危害をもたらさないこと、などがそうだ。

だが実際のところ、こうした条件はほとんど満たされておらず、大きく逸脱している場合も多い。

そのような場合、市場は豊かさを提供できない。

大多数の国民が、まともな生活が送れそうにないほどの収入で生活している。

このような場合、政府が対策に乗り出せば、事態を改善できる。

実際これまでも、不況時に政府が金融政策や財政政策を通じて経済を剌激し、失業を抑えてきた。

アダム・スミスの言う「見えざる手」(自己の利益を追求していれば、結果的に社会の福利が向上するという考え方)は、近代経済学の最も重要な考え方だろう。

だが、そのスミスでさえ、市場の力には限界があり、政府の行動が必要になることを認識していた。

実際、これまでの経済研究により、政府には市場経済に対して果たすべき基本的役割があるという認識が高まっている。

市場を理想どおりに機能させるには、政府の介入が必要だ。

国が発展するための政府の役割

私は、かつてスウェーデンの財務大臣に、なぜ同国の経済がうまく機能しているのか尋ねたことがある。

すると大臣は、「高い税金を課しているからだ」と答えた。

つまり、国の発展には、インフラや教育、テクノロジー、社会保障などへの公的支出が欠かせず、政府にはこの支出を持続的にまかなうための収入が必要だということだ。

政府の融資でテクノロジーが発展すれば、それが民間投資を促すきっかけになる。

労働者の教育水準が上がり、インフラが整備されれば、投資収益は向上する。

こうした見解は、レーガン流の「サプライサイド」経済学と真っ向から対立する。

サプライサイド経済学は、規制緩和による自由化、減税による活性化で経済は成長する、という前提に基づく。

だが実際には、レーガン政権の改革後、成長は鈍化した。

金融市場を中心とする規制緩和により、1991年と2001年に不況が発生し、2008年の金融危機に至った。

減税も、サプライサイド経済学支持者が言うほどの経済活性効果をもたらさなかった。

トマ・ピケティらの研究によれば、最高税率の引き下げに伴い、世界中で成長が停滞・鈍化したという。

サプライサイド経済学や、市場を自由化すれば成長するという信念が、見掛け倒しであることはもはや明らかだ。

減税や規制緩和よりも経済成長を促進する手段はたくさんある。

搾取と市場支配力

経済学の教科書を見ると、競争の重要性が強調されている。

だが、過去40年の間に経済学的な理論や証拠が積み重ねられ、大半の市場では自由競争が行われているという主張は崩れてきた。

かなり前の時代なら、米国では低コストでよい製品やサービスを消費者に提供しようとする無数の企業が競争している、と言えたかもしれない。

だが今は、ごく少数の企業が莫大な利益を独占し、何年にもわたり支配的な地位を維持している。

新たなリーダーたちはもはや、競争を支持する姿勢さえ見せない。

シリコンバレーの大企業家の1人、ピーター・ティールはこう主張している。「競争は負け犬がするものだ」

ビジネスリーダーたちが競争を好まないのは無理もない。競争があれば利益が減る。

彼らは多くの利益を求める。そのためには、より大きな参入障壁をつくって競争を防ぐ必要がある。

だから、そのためのイノベーションが無数に生まれたのだ。

少数の企業が「市場支配力」を持つ

例えば、通信のイノベーションの大半は、米国で生まれた。

そして、米国の通信は、他国より費用がかかる上にサービスが粗悪だ。

なぜか?答えは簡単。それは「市場支配力」だ。

今日、多くの市場で上位2、3社が販売に占める割合が増えている。

つまり、市場の集中が進んでいる。市場支配力がある企業は、高い価格を設定するなど、様々な方法で消費者を搾取できる。

こうした高価格は、低賃金同様に労働者を苦しめる。

市場支配力はまた、政治力につながる。

金権政治がはびこる米国では、企業は市場支配力により生み出した莫大な利益を元手に影響力を手に入れ、利益や権力をさらに高めることができる。

例えば、労働組合の力を弱める、競争政策の実施を抑制する、労働者の交渉力を弱めるような形でグローバル化を進める、といったことが可能になる。

市場支配力と国民所得のパイの配分

自由市場を信奉する経済学者はよく、国民所得のパイの配分は、公正な市場原理で決まると言う。

だが、市場は政策により形成されており、大半の市場は自由競争からほど遠い状況にある。

自由市場の信奉者はまた、アダム・スミスの言葉を引き合いに出し、個人や企業が自己の利益を追求すれば、「見えざる手」の力により社会の利益も促進されると言う。

だが彼らは、スミスが次のように警告していたことを忘れている。

「同業者が集まれば、それがたとえ遊興や娯楽を目的としていたとしても、必ず大衆に対する謀議や価格を上げる計略の話になる」この危険を認識していたからこそ、連邦議会は約125年前に、競争を妨げる陰謀を防ぎ、反競争的行為を制限する反トラスト法を可決したのだ。

グローバル化により自滅する国家

米国の現在の経済危機の中心的理由の1つが、「グローバル化」である。

グローバル化の影響は、雇用にも賃金にも現れている。

米国が、高い技術を必要としないが多くの人手を必要とする製品を輸入すれば、米国でそのような製品は生産されなくなるため、米国の労働者の需要が減り、それに伴い賃金は減少する。

グローバル化はまた、国から税収を奪うという形で米国市民に害を及ぼす。

グローバル化により企業は、国同士を競わせ、法人税を下げないと外国に拠点を移すと政府を脅すようになった。

そしてある国で法人税の引き下げに成功すれば、他国にも同様の威嚇を繰り返す。

共和党は、外国に負けないよう米国も法人税を引き下げなければならないと主張し、2017年に法人税率を35%から21%に削減した。

しかし、この減税で労働供給量の増加や成長率の向上が期待できる根拠は何もない。

むしろ、10年後の米国人の所得が下がる可能性の方が高い。

また、米国の企業は、税法上の複雑な規定を悪用し、実際に支払う税率をさらに下げている。

事実、多国籍企業に対する米国の実効税率(総利益に対する実質的な税負担率)は急落しており、2012年には公式の最高税率の半分近くだった。

グーグルやアップルの利益に対する税率は、わずか0.005%だったという。

こうした抜け穴を一掃するのは簡単で、2017年の税制改革の際もそれが約束されていた。

だが、企業がこの新税法作成を主導していたため、その約束は実現されず、むしろ事態は悪化した。

以前は、企業が税制を悪用できる範囲を制限する規定があったが、この規定を削除してしまったのだ。

なぜ政府の介入が必要なのか?

経済学者は過去50年の間に、社会的目標を確実に達成するためには「共同行動」が必要であり、市場の力だけに任せていては公平な成果は生まれないことを理解するようになった。

共同行動の必要性

つまり、任意の団体を通じて一緒に行動するだけでなく、必要な権限を持つ政府を通じて一緒に行動することが、公益につながる。

例えば、規制がないと、企業は汚染のコストを考慮しようとしない。

市場だけに任せておくと、汚染や格差や失業は激増し、基礎研究は進まない。

また、道路、空港、電気、水道、下水処理などの公共財も民間の提供だけに頼っていると、供給不足に陥る。

個人や企業は私的な利益のみを考え、社会的な利益まで考えようとしないからだ。

市場が果たすべき役割を果たせない分野、共同行動で福利を向上させられる分野は無数にある。

活力に満ちた経済は常に変化しており、市場の力だけではこの変化にうまく対応できない。

求められる規制の強化

相互依存社会に「規制」は欠かせない。

それは、ある人の行動は他の人に影響を与えるが、規制がないと、誰もその影響を考慮しなくなるからだ。

例えば銀行は、問題が生じても政府が救済してくれることを知っているため、平気で大きなリスクを冒す。

2008年の金融危機が好例だ。だから政府は、銀行がリスクを冒すのを防ごうとする。

一方、銀行は、こうした規制の撤廃を主張した。そして、リスクの高い行為を防ぐ規制の解除を実現した。

こうして銀行は、先の金融危機に限らず、危機に陥るたびに、政府に救済を求めている。

つまり、銀行が進めた規制撤廃運動は、大銀行に有利な規制構造をつくるためのものだった。

だが、どんな場合であれ考えるべきは「どんな規制を行うか」であり、「規制の撤廃」ではない。法や規制なしに、うまく機能する国や経済などない。

価値観を政策に組み込む

米国の政治があまりにも悪化してしまった今、国民をむしばむ病を治すには、もはや根本的な問題に目を向けるほかない。

そもそも米国人は、どんな価値観を大切にしているのか?

この「価値観」とは、個人の選択などに表れる価値観ではない。

公共政策や制度、経済的な考え方に影響を及ぼす価値観である。

経済学の問題の一端は、人間は利己的で実利主義的だと単純化した点にある。

人間がそれだけの存在でないことは、少し考えればわかる。

私たちは金銭を求めるが、モラルを無視してまで富を手に入れようとする過剰な貪欲をほめはしない。

米国人はむしろ、他人に身を捧げる人を称賛する。

自分の子には、利己的な人間ではなく、他人を気遣う優しい人間になってほしいと願う。

つまり私たちは、経済学者が言う「ホモ・エコノミクス」(絶えず自己満足を追い求める利己的な人間)とはまるで違う、もっと複雑な存在なのだ。

だが、こうした称賛すべき傾向を認め、模範として政策に組み込む努力を怠ると、卑しい傾向(強欲、他人の幸福への無関心)がその隙間を埋める。

すると、米国は暗黒へ向かう。そこでは、弱者が置き去りにされ、ルールを守らない者が得をし、すでに富裕な人々が搾取により経済的利益を独占し、真実や自由、共感といった概念が、政治的に都合のいい場合にだけ使われる言葉と化す。

一方、そこから抜け出せる兆候もある。私たちは、政界や実業界の指導者の行為に反感を抱く。

これは私たちが、利己心や貪欲に基づく経済体制に完全に染まっていないことを示している。

だが、それをとどめようとしなければ、ますます深みにはまっていくばかりだろう。

スティグリッツ PROGRESSIVE CAPITALISM 感想

ピケティの21世紀の資本の出版後、タックスヘイブンや富の格差が世界的に注目され、市場原理主義の立場が弱まっている。

だからと言って、安易にベーシックインカムを導入すればすべてが解決するほど問題は簡単ではない。(年金は疑似ベーシックインカムだと思うが、日本では機能しなくなっている。)

その解決策として「価値観」にフォーカスする既決はとても面白い。

他人の幸福を喜べる、他人を気遣う優しい人たちによる資本主義を目指して、私たちが何ができるかを考えたい。

さいごに

当記事を書かせていただきました、長谷川と申します。

私は大阪、神戸、京都でライフシフトサロン読書会を開催しております。

読書会のいいところは、SNSでつながる時代に、リアルな居場所を持てるということ。

関西で生き方・働き方でつながるコミュニティを探されていらっしゃるあなたの参加をお待ちしております。

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