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無形資産が経済を支配する-資本のない資本主義の正体-|まとめ・要約・感想

無形資産が経済を支配する-資本のない資本主義の正体-

(このページは2020年3月27日に更新されました)

はじめに

「トレンド本や名著をかいつまんで、要約・まとめを知りたい。」

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この記事はそんな方へ向けて書いています。

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無形資産が経済を支配する まとめ

今日、先進国では「無形資産」への投資が増えている。

無形資産とは、物理的なモノではなく、アイデアや知識、社会関係でできた資産のことである。

あらゆる先進国で重要性を増しており、一部の国では有形投資を上回っている。

無形投資には、次の4つの特性がある。

サンクコスト(埋没費用)

無形資産は売却することが難しい。

そのため、サンクコストと呼ばれる回収不能な費用が生じやすい。

スピルオーバー(波及効果)

無形資産は、他社が比較的簡単に活用できる。

例えば、ほとんどのスマホは、アップル社のiPhoneを真似ている。

スケーラブル(拡張可能)

無形資産はスケーラブルであることが多い。

例えば、いったんチェーン店のマニュアルを作れば、それは全店舗で使える。

シナジー

無形資産は、組み合わせることで価値が高まる。

こうしたシナジーは、しばしば革新的で予想外の規模になる。

 

現在、経済学の分野で最も困った問題の1つが、投資と生産性の低下つまり「長期停滞」だ。

「有形投資から無形投資への長期的なシフト」がそれを引き起こしている可能性がある。

金持ちは過去数十年でより豊かに、貧困者はより貧しくなった。

無形投資の増大が、富と所得双方の格差を増大させている。

無形資産は、有形投資とは違う振る舞いをする。

よって、無形資産が支配的な経済もまた、違う振る舞いをするだろう。

無形資産が経済を支配する 要約

無形資産の台頭

国内総生産(GDP)は、「消費・投資・政府支出・純輸出」の価値の合計と定義される。

そしてごく最近まで、国の統計局が計測する投資は、すべて有形資産だった。

だが、もちろん、経済は有形資産だけで回っているわけではない。

例えば空港は、滑走路やターミナルといった有形資産だけでなく、見たり触ったりしづらいものも所有している。

ソフトウェア、航空会社や小売り業者との合意、社内のノウハウ。

こうしたものはすべて、物理的なモノではなく、アイデア、知識、社会関係でできている。

経済学では、これらは「無形資産」と呼ばれる。

経済が“非物質的なもの”に依存するようになる、という発想は目新しいものではない。

アルヴィン・トフラーやダニエル・ベルのような未来学者は、1960年代や1970年代から「ポスト工業化」の未来について語っていた。

1990年代にコンピュータとインターネットの力が明白になると、非物質的なものが経済には重要だという発想は、広く受け入れられるようになった。

ニューエコノミーを計測する

ドットコムバブル崩壊後、2002年に所得と富に関する研究会議に経済学者たちが集められた。

彼らは、「ニューエコノミー」と呼ばれるものに対し、人々が行っている種類の投資をどう計測すればよいか、考えるために呼ばれたのだ。

この種の投資がどういうものか考えるために、当時、世界で最も時価総額が高かったマイクロソフト社を見てみよう。

同社の2006年における市場価値は、2500億ドルほど。

資産を計上するバランスシートを見たら、総資産は700億ドルほどで、うち600億ドルは現預金や金融資産だ。

工場や設備といった伝統的な資産はたった30億ドル、同社の資産の4%という微々たるものだ。

つまり、伝統的な資産会計によると、マイクロソフト社は現代の奇跡だ。

これは、資本なき資本主義なのだ。

マイクロソフト社の無形資産とは?

この会議からほどなくして、メリーランド大学のチャールズ・ハルテンは、マイクロソフト社の帳簿を精査して、いくつかの無形資産を確定した。

同社が研究開発や製品デザインへの投資で生み出したアイデア、ブランド価値、社内構造、研修で構築した人的資本などだ。

こうした無形資産は、物理的実体を持たないが、どれも投資の特徴を持つ。

同社はこうしたものに時間とお金を費やした。

そしてそれらは、同社が恩恵を受けるような価値をもたらした。

これらの無形資産は企業のバランスシートには現れず、国のバランスシートにも登場しない。

3種類の無形投資

チャールズ・ハルテンらは、無形投資を計測した際、次の3種類に分けた。

①コンピュータ化情報

ソフトウェア開発やデータベース開発への投資。その好例はソフトウェアで、購入したソフトや企業が自社用に書いたソフトなどがある。

②イノベーション財産

研究開発や鉱物探索、デザイン、その他の製品開発費用など。

③経済能力

マーケティングとブランディング(顧客ニーズの理解とブランド作り)、組織資本(固有のビジネスモデルや企業文化の創造、およびその会社固有の研修)など。

無形投資は何が違うのか

無形投資は、ほとんどあらゆる先進国で、ますます重要性を増してきた。

実際、一部の国ではすでに有形投資を上回るようになっている。

では、無形投資には何か根本的に違うものがあるのか?

それは、有形投資とはかなり違う、次の4つの経済特性を持っている。

サンクコスト(埋没費用)

まず、無形投資は「サンクコスト」を表すことが多い。

例えば、コーヒーチェーンが倒産すれば、店舗や什じゅう器き、配達車両などを売って資金を回収できる。

こうしたものが売買される中古市場があるからだ。

しかし、無形資産は簡単には売却できない。

そのコーヒーチェーンならではの運営マニュアルや顧客対応マニュアルを、他社に売るのは難しい。

この種の回収不能費用をサンクコストと呼ぶ。

回収不能な費用が大量にある投資は、資金調達が難しい。

その企業が行き詰まった時、銀行は資金を回収しにくいからだ。

スピルオーバー(波及効果)

第2の特徴は、それが「スピルオーバー」を作り出すということだ。

つまり、他の企業が他人の無形投資を活用するのが比較的簡単である。

例えば、他人のアイデアをコピーするのは比較的容易だ。実際、アップル社がiPhoneを発表すると、ほとんどのスマホはiPhoneそっくりとなった。

アップル社のソフトウェア、設計、サプライチェーンは、アップル社のものと似たスマホを作ろうとする競合他社により真似られた。

スケーラブル(拡張可能)

無形資産はまた、「スケーラブル」である。

例えば、スターバックスの店舗マニュアルを中国語でいったん書けば、それを中国の店舗すべてで使える。

このスケーラブルという特性は、多くの無形資産にあてはまる。

スケーラブルな投資の多い経済では、極めて無形集約的な企業がいくつか巨大化しているはずだ。

例えば、グーグル、マイクロソフト、フェイスブックは、無形資産のソフトウェアや評判をスケーリングできるので、かつての製造業の巨人よりもさらに巨大化が可能になった。

こうした巨大市場の展望が開けると、ますます多くの企業がそうした市場に挑戦しようという気になる。

その結果、競争もかなり厳しくなる。

シナジー

無形資産(アイデア、新デザイン、新しい商品マーケティング方法)は、お互いに「シナジー」を持つ。

つまり、組み合わせによって価値が高まる。

アイデアは他のアイデアと組み合わさることで威力を発揮する。

例えば電子レンジは、軍事関連企業(レーダー設備からのマイクロ波が食品を温めるのに使えることを発見)と、家電メーカー(家電機器の設計能力を活用)の提携で生まれた。

これは、極めて価値の高いイノベーションだ。こうしたシナジーは、しばしば予想がつかない。

有形資産にもシナジーはあるが、通常は無形資産ほど革新的で予想外の規模にはならない。

もし自分のアイデアを他のアイデアと組み合わせた方が価値が高まるなら、できるだけ多くのアイデアに触れさせようという強いインセンティブが生じる。

これが顕著に現れているのが、オープンイノベーションの普及である。

無形資産が長期停滞を招く

では、無形資産は、経済や社会にどのような影響を与えているのか。

現在、経済学の分野で最も困った問題の1つが、「長期停滞」だ。

近年の主要経済に見られるもので、投資と生産性成長の不思議な低下である。

あらゆる面から見て投資が回復してしかるべきなのに、事業投資が頑固に低いままなのだ。

長期停滞という、この困った現象で重要な役割を果たしているのが、無形投資の増加である。

長期停滞:その症状

長期停滞と無形投資とのつながりを見る前に、長期停滞が実際どういうものかを見ておこう。

まず、「低投資」だ。米国と英国の場合、1970年代に投資は下がり、1980年代半ばに少し復活した後、金融危機で激減した。それ以降、投資は回復していない。

次に「低金利」だ。長期実質金利は1980年代半ばから低下を続け、金融危機以降は特に低水準になった。これで投資を行う費用は極めて低くなったのに、その後も投資は回復していない。

低投資と低金利が同時に起きているのは、経済学者にとっては謎だ。

昔から、中央銀行は低投資にどう対処すべきかわかっているつもりだった。

中央銀行はベース金利を引き下げて、お金のコストを安くする。

その結果、企業も消費者もお金を借りやすくなり、投資と消費が増える、というわけだ。

だが、この戦術は機能しなくなった。

企業利潤は高いのに投資は伸びない

長期停滞と関連した症状は、さらにある。

1つは、米国その他の企業利潤が過去数十年で最高の水準になっていて、しかも着実に増えていること。

企業は、ずいぶん儲かっている。

利潤が高いなら、企業はもっと投資したくなるはずだ。

だが、投資は伸びていない。

また、長期停滞をめぐる奇妙な事実として、収益性の面で企業ごとにかなり差があり、その差はどんどん開いている、ということがある。

トップ企業の利潤は激増している。

トップ企業にとって、投資機会は消えたようには見えない。

これは競争がなくなっているのではないかという論争を引き起こした。

結論:長期停滞における無形投資の役割

上述の通り、長期停滞は複雑な現象である。

その原因として考えられるものも様々だが、「有形投資から無形投資への長期的なシフト」がそれを引き起こしたり、悪化させたりしている、とみられる。

まず、「計測ミス」で、この謎の一部は説明できる。

先に述べたように、無形資産は普通、企業のバランスシートには現れないため、無形投資は計測しにくい。

そのため、国民会計にも十分に反映されていない。

投資が低く見えるのは、実際に行われている無形投資を正確に計測できていないせいかもしれない。

第2に、無形投資の特性により、極めて大規模で収益性の高い企業が台頭しつつある。

無形投資のスケーラブルでスピルオーバーを示すという特性により、無形資産を創り出し操作できる企業は、不釣り合いなほどの便益を得られる。

つまり、(a)価値あるスケーラブルな無形資産を持ち、(b)他の企業からのスピルオーバーを獲得するのが上手い企業は、生産性が高く、利潤を上げ、競合他社の投資インセンティブを下げる。

これで、低い投資水準が説明できるかもしれない。

第3に、大不況の後で、無形資本形成の成長速度は低下した。

これでスピルオーバーも減り、企業のスケールアップも以前より遅くなった。

これを支持する証拠も少しはある。

このように、有形投資から無形投資へのシフトが、長期停滞を引き起こす原因になっている可能性がある。

無形資産と格差の増大

今日、最も議論となっている経済問題は「格差」だ。

金持ちは過去数十年でますます豊かになり、貧困者はますます貧しくなってきた。

その原因として、新技術やグローバル化などが提起されてきたが、無形投資の台頭も、富と所得双方の格差を増大させていると考えられる。

所得の格差

無形集約型の企業は、他の無形資産とのシナジー構築のため、より優れた社員を必要とする。

企業は彼らを徹底して選別し、報酬も上乗せする。

無形投資が作り出すシナジーやスピルオーバーは、競合する企業同士の格差を増し、この格差が従業員への報酬の差の増大につながる。

富の格差

活発な都市には、スピルオーバーとシナジーが大量に存在する。

無形投資の増大は、都市をますます魅力的な場所にするので、一等地の価格は押し上げられる。

これが、大金持ちの富の増加の大半をもたらすことになった。

さらに、無形投資は国際的な移動性が異様に高いので、「課税競争」を引き起こす。

つまり、企業や金持ちは最も有利な税制を求めてあちこち探し回る。

このため政府は増税しにくくなり、格差を縮小するのが難しくなる。

無形資産の台頭は、投資の性質におけるちょっとした変化ではすまない。

無形資産が有形投資とは違う振る舞いをするので、無形資産が支配的な経済もまた違う振る舞いをするだろう。

無形資産が経済を支配する 感想

NewsPicksやキングコング西野さんの周りで「無形資産」というキーワードが良く用いられている。わかるようでわかりにくい無形資産を明確に示してくれた一冊。

実は1960年代から無形資産について言論がされており、マイクロソフトなどのIT企業を評価をする際に無形資産に着目がされていたのは驚きである。

本書は企業の無形資産を中心に言及しているため、私たち個人がどのような無形資産を持ち、どうその特性を活用していくかについて直接的に言及はされていないが、”企業がどのように無形資産の特性をとらえて活用していくか”を知れば個人にも応用していけるだろう。

さいごに

当記事を書かせていただきました、長谷川と申します。

私は大阪、神戸、京都でライフシフトサロン読書会を開催しております。

読書会のいいところは、SNSでつながる時代に、リアルな居場所を持てるということ。

関西で生き方・働き方でつながるコミュニティを探されていらっしゃるあなたの参加をお待ちしております。

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